三章

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二ヶ月後、元気な男の子が生まれ、『( つばさ)』と名付けた。 パパになった洋輔は、外回りの日は少し家により顔を見ていくほどの子煩悩で、休みの日には散歩や買い物、育児など積極的に手伝ってくれ、月日は流れ三年が経った。 「パーパー!おはな、もらったよ」 「誰にもらったんだ?ありがとうって言った?」 「いったー」 「そうか、偉いな翼ー!」 公園でお花見をしながら遊ばせているとそんな会話が聞こえてきたので、翼の来た方を見る。 風になびく黒い髪、一瞬それが見えたが、間違いかもしれないと言い聞かせ、ママと呼ぶ翼をだっこする。 「今度は花火を見に行こうな」 「パパー、はなびってなぁに?」 「お空にな、ドッカーンて大きなお花が咲くんだ。夜に見るからとてもキラキラしてて綺麗だぞ?」 子供と自分を愛してくれる夫。 数年の時を経てやっと幸せになれた今、手放すことはしたくない。 時折感じていた視線が前妻ならば気をつければいい。 そう思い、そっとお腹に手を置く。 (終)
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