一章

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夜ちょうど19:00にチャイムがなり、玄関を開けると、「ただいま」と声をかけてくれる。 「おかえりなさい」 結局、和室は見えるのが嫌で閉めてしまったが、家具がほとんどない事は、前にも来たのでわかるだろう。 使っているのはリビングと寝室のみ。 リビングにも必要最低限のものしか置いておらず、女性のひとり暮らしとは思えない程に殺風景な部屋だ。 家具がない分響くのが難点ではあるが。 食事を温め直しながら「奥さん大丈夫?」と聞く。 「大丈夫。いつも早くても21時は過ぎてるし、そうなる様に時間を潰してから帰ってるから。とはいっても、七月の中間決算までは忙しいんだけどね」 「そうだったね。あのころと変わらない?」 「今は俺が課長。取り持った部長はもう定年したよ。だから、来月は中々来られないと思うんだ」 「そう……」 煮物の器を並べながら、今度はいつ?と考えてしまう。
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