三章

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住所は詳しく書かなかった。 ただ、近くに遊園地があり、冬の花火がとても綺麗だったことだけ添えて。 二週間ほど経ち、少しずつ出産準備のためにと鞄に詰めていると、珍しく車の音がしたので縁側から見ると、見たことのないワンボックスカーご家の前に止まっていた。 よいしょっと、チャイムがなる前に立ち上がり、玄関へと向かう。 ドンドンドンドンドン 扉の叩かれる音に、ちょっとムカつきながら、誰?と聞こうとすると、「智菜美、俺だ!洋輔だ」 そう言って扉を叩く。 「洋輔さん……」 扉を開けると、探した!と飛びつきそうになるのを、お腹を見て留まったようで、「俺の……俺たちの子」と優しくお腹を抱きしめてくれる。 「帰ってきてくれないか?」 「でも……勝手に出ていったのよ?私」 「君が悪いんじゃないだろ?俺がもっと早く手続きを済ませれたらよかったんだ。嫌な思いばかりさせてごめん」 「して無いよ?この子と一緒だったから」
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