48人が本棚に入れています
本棚に追加
六畳二間と台所位しかない小さな家を見て、「何も無いんだな」
そういう彼にお茶を入れる。
飲み物しか入らない程度の冷蔵庫、台所も包丁とまな板、フライパンがひとつ。
お皿や茶碗もひとつずつ。
テレビもなく、机がひとつ置いてあるだけ。
「まさか……」
「信じてみようと思ったの。迎えに来てくれるって」
「妊娠のことせめて教えてくれてたら……」
「何度も言おうと思ったけど、言えなくて。産む前に住所を移すつもりだったの。その後に色々揃えたらいいかなって考えてて」
「帰ろう。俺たちの家に」
荷物を持ってもらい、車に乗り、それが会社の車と気づくまでしばらく掛かった。
「昨年……あなたが引っ越してきた時は、桜が満開の時で、花びらが舞っているのがとても綺麗で、でも、どこか儚い感じだった。
今年はもう散ってしまったけど……」
「来年は三人で見に行こう」
そして途中で役所によって婚姻届を提出し、久々にマンションに帰る。
最初のコメントを投稿しよう!