一章

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自転車でスーパーに行き、いつもと同じように野菜から見ていく。 じゃがいもに人参、玉ねぎ。 特売と書かれた商品を中心に、献立を考えながらカゴに入れていく。 お肉や魚コーナーを回り、コーヒーがそろそろなくなりそうだったと、コーヒーのコーナーへと行く。 安いインスタントコーヒーをカゴに入れていると、少し離れたところにある紅茶コーナーで選んでいる、当時と変わらない姿の先輩の奥さんを見つけてしまう。 相手は私のことは知らない。 だから大丈夫。 そう、自分に言い聞かせ、横を通り過ぎた時に目にしたものは、大量のインスタントラーメンなどの袋。 そしてカップの味噌汁に、レンジで温めるご飯。 見た目は昔と何も変わらず、体にフィットしたワンピースを身につけ、化粧も綺麗に施してあるのに、カゴの中だけがとても浮いて見え、平常心と自分に言い聞かせながら、レジへと向かう。 一刻も早くここから立ち去りたい。 そんな事しか考えられずに、エコバックに適当に買ったものを詰めて自転車で急いで帰る。
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