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01.グリム兄弟
「ヘルム、疲れてないか?」
ヤコは自分より少し後ろを歩く弟に背中越しに声をかけた。既に二日ほど殆ど休み無く歩き続けていることを考えれば、返ってくる返事は自ずと予想できる。
「疲れてないと言えば…嘘になるね。兄さんは?」
「俺はまだいけるが…そうだな、疲れてないと言えば嘘になる」
「人の心配をしてる余裕はあるんだね」
ヘルムはまだ余裕がありそうだった。息が上がっているのは確かだが、ヤコの口から少しの弱音を吐かせるくらいにはまだ余力があるようだ。
「さっきのおっさんの言うことが正しけりゃ、この先に大きな街があるはずだぞ」
「そうだね。そこに行けば多少は休めるかな。…気になることも言ってたけどね」
ヘルムは含みのある言い方でヤコを見ている。ヤコは立ち止まり、振り返ってヘルムを少し見た後口を開いた。
「あのおっさんが言ってた“魔女”ってのがその街にいるってか?」
「少なくとも、何か話を聞けることは間違いないんじゃないかな。さっきの人の話で、このあたりの地域には魔女伝説が蔓延ってるっていう情報を思い出した。古い文献だったから信憑性は欠けるけどね」
「お前、そういうのはもっと早く思い出せ」
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