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ダイスは未だに痛む後頭部をさすりながら、気に食わぬ顔でグリム兄弟を睨みつける。
ウレシアが口を開いた。
「グリム兄弟…聞いたことある。その能力は謎に包まれてるみたいな話も。その詠唱の研究と、あなたの少し変わった詠唱に関係があるってことね」
「そうだ」
ヤコは右手をウレシアに向けて伸ばした。
「俺たちは5年前に、魔法行使の詠唱の新たな規則を発見した。今なお分からないことだらけだが、この新たな詠唱を使うと、魔法が通常よりも力を増すんだ」
続けてヘルムが話す。
「僕たちはこれを“グリムの詠唱規則”って今のところは呼んでる。もちろんまだ世間には知られていない法則だから、そう簡単に広めようとは思わない。研究も途中だしね」
ヘルムはウレシアに目をやって続けた。
「新しい詠唱規則って言っても、既存の詠唱との違いはそこまで大きくない。それを、兄さんのたった二回の詠唱で見抜くなんて、ウレシアさんは只者じゃないね」
ヘルムの微笑みがウレシアに刺さる。
「私はウレシア・ミナ。いちおう魔導師。あなたたち二人の研究には興味があるわ」
ウレシアは少しダイスに目をやりながら続ける。
「こっちはダイス・ヴォルボット。魔法はほとんど使えないけど、剣の腕は確かよ。さっきはごめんなさい」
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