序章

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―――もしもあの時、真っ白な雪に包まれたかのような鬼にであわなければ。 たられば俺がこの世界に存在しなかったら。  そんな今更考えたってどうにもならない事をふと考えてしまう。 それは今起こっている現実逃避で、誰にだって俺と同じ立場になれば考えてしまう事だと思う。 まぁ、同じ立場にはそうそうならないと思うが。  しかし、いつまででも目を背け続ける事で、また沢山の死と残酷さ、絶望と悲しさが積み重なっていく。 いや、俺はそんな正義感溢れた純粋で綺麗な考えをした人間ではない。 だって俺がその元になり、俺がそれを作ってきたのだ。 そんな綺麗事、言える資格なんてない。  綺麗事と言っても事情を知っている奴には、どうしても嫌味にしか聞こえないと思う。 そしてそいつは吐き捨てるように、こう罵倒するのかもしれない。 お前はそうやって人を蔑み、なんの関係のない人たちを犠牲にしていくだな、と。 皮肉なことに俺がそいつらの立場だったら、もっと強い罵声を浴びせるがな。  そんな俺は、いつでも嘘偽りだらけの言葉で大切なものは何も見えていない、愚かな人間なのだ。
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