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「──ところで、じゃあ結局のところ僕に用はなかったんですか?」
「うんまぁ、用といった用はないねぇ。」
なら何故僕に会いたかったのか。
「本当にただ一目会っておきたかった、それだけ。けど別に今日のこの時間のこの場所である必要はなかったけどね。
何でここで待っていたのかと言えば、実を言うと違う男を待っていたの。
そう。君を待っているようで私は、違う男を待っていたのさ。」
「いや別に違う男をほのめかされても僕は嫉妬しませんから。」
正直なところ美少女な先輩に待たれていたと言うイベントはさっきの辺見先輩の言葉ではないがわくわくなことではあったから、僕を待つことがメインではなかったと言われると若干気落ちしなくもないが、それは表には出すまい。
「まぁまぁそんなに落ち込まないで湊くん。寧々頭 湊くん。」
「え────」
僕はまだ、この人に名乗った覚えはない。
「おっと待ち人が来たみたいだ。」
何故僕の名前を知ってるのかと尋ねようとしたのを遮るかのように、辺見先輩は言った。
「彼は後前田 誠。前なのか後ろなのかはっきりしない、私の可愛い後輩さ。」
「俺の名前で遊ぶなっていつも言ってんじゃねーかクソアマが。」
辺見先輩が後前田と言ったその男子生徒は、一目でわかるほどのあからさまに悪そうなやつだった。
髪は金色に染め、額には刻み込まれたかのように、縦皺を寄せ、だぼったいズボンを腰の辺りで履いている。
ぱっとみ明らかに不良のようだった。
と言うかこいつは絶対不良だろ。
「あれあれ、いつから君は私より偉くなったのかな?
いつから、高校二年生は高校三年生より偉くなったのか、是非ともご教授いただきたいものだねぇ。
それともあれかな? 君は美少女でミステリアスなこの先輩にお仕置きされたいとか、そう言うタイプの変態なのかな?」
「うっ……」
蛇のように鋭い目つきに子供のような悪戯っぽい笑みを混ぜて言う辺見先輩に、その不良はたじろぐ。
どうやら辺見先輩は、人をいじめて楽しむドS的な性質を持っているようだ。
「す、すいませんでした……」
不良は絞り出すように言った。
けれどそんな彼を見る僕に対して、明らかにあからさまにはっきりとガンを飛ばしてくる。
「そんで、コイツが鼠ッスか。」
「まだ鼠じゃないよ。」
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