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それからの出来事に、特筆すべきことはない。
僕は世の中のほとんどの人がそうするように普通に自宅へと帰り、家族に新しい学校の感想などとありきたりなことを聞かれ、姉にこき使われる、そんな面白みのかけらもない普通な日常だ。
けれどそんないつもと同じ生活を送りながら、どうにも心に引っかかるものがあった。
言うまでもなく、あの先輩たちだった。
たしかに変な人たちだったが、そこまで気にすることなのかと、そう聞かれれば返答に困る。
だって僕自身がそう思っている。
けれど、僕はあの二人のことが頭から離れない。
辺見先輩が美人だったとか、後前田先輩がちょっぴりだけ怖かったとか、そう言うのとはきっと違う。
これから通う学校にあんな問題児が通っていると言う事実に一抹の不安を抱いているのか、と問われれば、まぁそれはそれで否定できないところもあるけれど。
「散歩にでも行くか。」
僕は実は暗くて狭いところが好きだ。
根暗な趣味であることはよく理解しているけれど、つまりは暗い夜道を歩きたいと言うことだ。
モヤモヤしたりするときは、一人で夜に散歩する。
外は流石に狭くはないけれど、でも適度に暗い道を歩くとなんだか気分が和らぐ気がする。
と言うことで僕は夕飯を終えた後、風呂に入る前の軽い運動代わりに一人家を出た。
本当に当てのない気ままな散歩なので、行き先なんて当然無い。
暗い夜道を歩くと言っても、今の世の中では住宅街で街灯のない道などないので、結局のところそこそこ明るい。
でも、しんと静まった夜道を歩くだけでも、心は割と透き通るものだ。
いつもと同じ道。
僕のよく知るこの街の道。
毎日のように飽きるほど見ている、ありふれて普遍的なこの道。
しかしなんだか、いつもと違う気がする。
別に現実的にありえないものがあるわけでもなく、日常的に目にして当たり前のものしかない。
しかし何故こんなにも違和感を覚えるのかといえば。
数だ。
圧倒的に多い。
普通見かけるであろう数を、恐らく圧倒的に超えている。
普通こんなに沢山いたるところには、『いないはずだ』。
猫だ。猫が沢山いる。
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