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恰好悪いって分かってるのに止まらない。
周りがぎょっとしているのが雰囲気でわかった。
でも止まらない。涙を流す俺に良一は
「尚どうした?」
とまるで恋人の様に顔を近づけて聞いてきた。
あの子が教室の外で見ているのにいいんだろうか。
でも、引き剥がせない。
嬉しいと思ってしまう。
「良一、あの子と付き合うの?」
それだけ聞くと、良一は少し驚いた顔をしてから「付き合わないよ。」と答えた。
それから
「帰ってちゃんと話をしよう。」
と言った。
それは有無を言わせないもので、漠然とああ終わってしまうのかと思った。
良一は一緒に帰るからちょっとまっててと言って教室の外にいるあの子のところに行って何か二三言交わしていた。
仲がいいんだということが分かった。
また、涙が溢れてしまった。
◆
部屋に戻ってドアを閉めた瞬間に良一に抱きしめられた。
二人っきりの時に抱きしめられたのは初めてだった。
「ねえ、尚俺自惚れてもいい?」
きつく抱きしめられながら聞かれた言葉の意味が分からなかった。
「本当にあの人と付き合わないのか?」
靴も脱いでいない状態で良一に抱きしめられて、最後かもしれないと思ってこんな時になって気が付くなんて馬鹿だよなと思う。
「付き合わないよ。」
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