お昼

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良一はそう言って、自分の前にあるからあげに箸を付けた。 良一が食べ始めたので、俺も箸を運ぶ。 やっぱからあげの方が良かったかな。 山もりの鶏肉が美味しそう。 「ほら。」 積み上げられた、からあげを一つ箸でつまんで良一が差し出した。 慌てて、ご飯の盛られたどんぶり差し出す。 そこにそっと置かれたからあげを見て、口角が上がる。 今まで、頼んだってくれない事の方が多かったはずだ。 「……恋人には優しくするって事?」 「違うな。ただそういう気分だったからだよ。 恋人だからというより、尚っていう人間が好きだから何気ないやり取りをするのが楽しいんだ。」 ゆっくりと噛みしめる様に言われ、思わず照れた。 頭の片隅で、これは周りに恋人だと周知徹底させる為に言っているという思考がよぎったけど、それでもジワジワと恥ずかしい様な、それでいて心臓のあたりがもぞもぞとする様なそんな気持ちになった。 目尻を下げてこちらを見つめる良一に居たたまれなくなって、自分の皿からとんかつを一切れ箸で取るとそっと差し出した。 「どういった心境の変化で?」 ニヤニヤと面白そうに聞く良一に。 「たまたま、“そういった”気分だったから。」 つっけんどんになってしまったけど、良一が面白そうに笑ったので良しとする。     
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