526人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
膝枕
最近どうも落ち着かない。
恋人同士のふりをしていると言っても恋人らしい部分は一番最初にしたキスと、それ以外だと手を繋ぐ位だ。
それ以外は仲の良い友人と変わらない。
なのに、ここのところどうも上手くいかない。出来ない。
ぼーっとしていて、良一の視線に気が付くと大体すごく優しい笑顔で見つめられているし、そっと差し伸べられる手はいつも優しい。
それが、ムズムズとする。
恋人(偽装)とはいえ、良一は俺に甘すぎるのだ。
「なあ、普通恋人ってこんな甘やかしてくれるもんか?」
俺が良一に聞くと良一は首を傾げた。
「そんなに甘やかしてるつもりはないんだけどな。
そもそも、俺恋人がいたことがないからわからないよ。」
良一は笑った。
やっぱりムズムズと背中がこそばゆい気がする。
そもそも、真夏の中庭はお昼休みは誰もいない。
恋人ごっこなんかする必要は無いんだ。
最近は転校生も他に気分が移った様でそもそもあまり鉢合わせない。
一時的だって最初から分かっていた終わりがもうすぐ来てしまうのだ。
終わってしまうということがとてもとても嫌なものな気がして、短い時間でそんな風に変化してしまったことが怖くて、もう終わりにしようと言おうと口を開いた。
だが、まるでタイミングを見計らったみたいに良一は俺の膝に頭を乗せて寝ころんだ。
一応屋根付きの東屋みたいなところで今日は風もあるので過ごせないという程ではないけれど、7月の日差しは暑い。
そんな中わざわざ男の堅い太ももに頭を乗っけて、過ごしやすいとは思えなかった。
「ちょっ!?何してんだよ。」
「えー、俺も甘えようかと思って。」
普段見せる爽やかな笑みは影をひそめその顔はいたずらっ子の様だった。
毒気を抜かれてしまった感じになって、息を吐く。
何となく、本当になんとなく良一の髪を触ると思ったよりチクチクとしていてちょっと面白い。
頭は重たいし、触れている部分は熱でじっとりと汗をかいているしで不快な状況の筈なのに、どけと言い難くて結局お昼休みが終わるまで良一の頭は俺の太ももの上にあった。
了
最初のコメントを投稿しよう!