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真尋は久しぶりに病室へと出向いた。卒業式が終わった後で、いろいろ冷めきれないままに。
301号室の少女は、儚げな微笑みをたたえて真尋を迎え入れた。彼女もまた、興奮しているのだろう。汚い意味で。
「お兄ちゃん」
「杏、梅香崎学園への入学が決まった。特待生だ」
「すごい! さすがお兄ちゃん!! 」
今にも折れてしまいそうな体を支え、真尋は妹の幸せが自分の幸せだというように、目を緩める。
「ねぇ、お兄ちゃんって髪長いほうよね、肩より下ぐらいまであるし」
「ああ。杏が伸ばしたほうがいいと言ったから」
「ねぇ、お兄ちゃんって眼光鋭いよね。垂れ目なのに」
「気にしてることを言わないで」
「ねぇ、お兄ちゃんって、喧嘩、強いよね」
「……? まぁ、杏は強い男が好きなんだろう? 」
王道的に暴走族だったとかはないが、これでも身体は鍛えてきた、はず。校内の風紀を乱す奴らは何人かしばいている。
質問が終わった瞬間、花が咲いたかのように笑い出した。もう本当に眩しすぎて、真尋は目を思わず塞ぐ。
「だからね____おにいちゃんは、不良っぽいのが似合うと思うの」
「はぁ、? 」
元風紀委員に校内を乱す不良になれというのはあまりにも酷だ。
「あ、襲うとかそういうのは勿論ダメだけど。梅香崎学園ってテストの点数が取れるか取れないかだから。授業サボったり、保健室で寝てたりするだけでいいの。でもでも、不良っぽい言動とかしてくれると嬉しいな……」
この妹、随分と饒舌である。真尋は若干引いたが、これも妹のためだと思い聞かせる。妹から学んだBLの知識を活用すれば、演じるのも簡単だ。
「分かった。お兄ちゃん、頑張るよ」
「本当!?
じゃあはいこれイヤーカフねピアスはさすがに申し訳ないからイヤーカフねあと黒縁眼鏡なんかも似合うと思うのテストの時とか時々かけて驚かせてあげてあと親衛隊は作っていいのよ制服は着崩してネックレスなんかもつけていいのよでも同室の子には優しくしてあげてギャップよギャップけどチャラチャラしちゃダメよ料理も得意なんだから作ってね私服は私が選んだやつ送ってあげるから安心してミステリアスになるのよミステリアスに………」
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