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奴らが、こたつを占拠している。
向かい合う対辺を串刺すように、我が愛しの妹が長い髪を広げて横たわっている。それと直行する形で、我が尊敬する兄が手を横に広げ仰向けになっている。
目障りだ。
愛しくも尊くもねえ。そこからどけ。
ただ呆然と目の前の光景を見つめる自分は、ただただ冷えた体を震わせている。さっきまで母親に頼まれてスーパーへと買い出しに行っていた。年末のこと、年越し準備や正月準備で足りなくなるものも出てくるのだろう。素晴らしい新年を迎えるためだ、仕方ない、と重い腰を上げて買い物に出かけた。ちなみにそのとき兄はネットラジオに集中して、妹は彼氏との電話に心を奪われ、一切母親の声を聞いていなかった。
凍える冬の街を自転車で往復し、おまけに久々に出くわした中学校の同級生どうしが「結婚したんだよーえへへー」と言いながら赤ん坊をあやしていた。俺は今、身も心も凍えているのだ。
震える声で、呟く。
だから、こたつを、空けろ。
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