私たちの、善良なる執事

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 ぬっと湿った鼻先が近づいてきて、温かい舌がわたしの頬をざりざりと舐めた。ようこそおいでくださいました、と彼――ジャッキーは言っているかのようだった。思いがけない歓迎に、わたしは驚く。ジャッキーはインドの犬だ。リゾートとして開発されたゴアの宿泊施設で、彼はわたしたちを迎えてくれた。  彼の頭をそっと撫でる。すごく気持ちよさそうに目を細めてくれたので、喉元もくすぐってあげる。すると彼は大きな体をごろんと横たえた。無防備に差し出されたお腹をゆったりさすると、彼は満足そうにそのまま眠ってしまった。 「那実、催眠術師みたいねえ」  隣であずさが笑った。香の焚きしめられたロビーは広々として明るかった。ソファのクッションは犬の毛にまみれている。ジャッキーのような茶色い毛、黒い毛、赤毛。指で摘みながら、まだ見ていない犬たちの姿をわたしは思い描いた。
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