私たちの、善良なる執事

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 それからというもの、わたしは放心したままだった。仕事はミスばかりが続いてしまい、事情を知っている上司はとても困った顔をしていた。たかがペットロスで、と頭ごなしに怒られないのが、逆に辛かった。挙句に体調まで崩してしまったわたしに、彼女は言った。 「少し、お休みしなさい」 「でも」 「私も昔、飼っていた犬を看取ったことがあるの。だから、あなたが感じている哀しみを『そんなことで』と言いたくない。でも、ミスが続いているのは事実。あなたの具合が悪いのも事実でしょう? 元気になって、戻ってきなさい」  そうしてわたしは休職の扱いになった。まさか愛犬を亡くして、とは書けなかったので体調不良のため、ということにしてもらった。お医者さんを紹介してもらって診察を受けたら、喘息の兆候と重度の貧血が見つかった。早めに手を打ちましょう、と言われて吸入器や真っ赤な造血剤を沢山渡された。
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