私たちの、善良なる執事

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 家にいるようになって、わたしは鬱々と考え込んでいた。ペットを亡くして体調を崩すなんて、情けない。でもコロはペットじゃなくて、家族なのだ。わたしの弟だったのだ。自然と涙がぼろぼろ出てくる。わたしが泣いている時にいつも隣に座ってくれていたコロがいないことにまた涙が溢れていく。  しょげかえっているわたしに、両親やほとんどの友達は必ず「コロが心配してるよ」と慰めの言葉をかけてくれた。けれど一人だけ――親友のあずさだけは一度もコロの名前を出さなかった。あずさは彼女自身がわたしを心配しているのだ、と言ってくれた。  彼女はメールでこう提案してきた。 「旅に行かない?」 「どこ?」 「インドの南」  そうして、わたしは添付されていた案内を開いた。行先はゴア。インドの南に位置するビーチリゾートの地域だ。旅費を思ってわたしが即断できずにいると、 「ペア旅行券持ってるから問題ナッシンだよ」  ピースサインの絵文字と共にそんな返信が来た。あずさが通っているヨガスタジオの新春キャンペーンで一等のペア旅行券を当てたのだという。だからインドなのか、とわたしはようやく納得した。
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