電脳ウサギとココロのありか

2 >> 稲葉とラビット・ドットコム

今現在はバイト扱いの、ただの押し掛け見習いに過ぎないのだが、繁華街のオフィスビルの一室にある、その小さな探偵事務所に、稲葉は学校に内緒で通っていた。

探偵事務所の名は『ラビット・ドットコム』。

所長の宇佐美諒(うさみ りょう)が自分の「宇佐美」と、卯月李々子の「卯月」の名から、遊び心で付けた名だ。

全ては、ほんの一年ほど前、ある依頼でこの女子高に潜入していた宇佐美との出会いがきっかけだった。

小さなころから探偵に憧れていた稲葉は、宇佐美の仕事っぷりと人柄に惚れ込み、押し掛けるようにしてその探偵事務所に入り込んだのだった。

今目の前に居る、色っぽさと子供っぽさを絶妙に配合したこのお色気お姉さん、卯月李々子は、宇佐美の下で働くいわばマネージャーのような存在だ。

一目見た時から稲葉を気に入ってくれたらしく、以来変わらず濃いスキンシップで稲葉をかわいがってくれている。新人社員としてというより、ペットとして、と言った方が近いような気が稲葉にはしていたが。

ちなみに「シロちゃん」は、因幡(いなば)の白兎にひっかけて、李々子がつけたあだ名だ。

最初は馴染めなかったが、ラビット事務所の一員になれた気がして、今では気に入っている。