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「近くまで来たんでシロちゃんの学校覗いてみたくなったのよ。それにしても、すごくきれいな校舎なのねえ。びっくりしちゃった」
「びっくりはこっちですよ。……って、いつまで抱き付いてるんですか!」
真っ赤になって稲葉が叫ぶと、李々子はスルリと手を引っ込め、今度は目を丸くして立っている二人の女生徒を見つめてニコリとした。
「あらー、かわいい生徒さん。こんにちはー。稲葉がいつもお世話になってますー」
「いや、李々子さん、その挨拶ちょっと間違ってますから」
女の子たちに近づく李々子を引き寄せながら稲葉は慌てて二人に取り繕った。
「ごめんね、なにか僕に話があったみたいなのに。あの、……この人、酔っぱらってるみたいだから連れて帰るよ。近所の人なんだ。また今度話を聞くから」
困惑顔の女生徒二人を残し、稲葉はそのまま李々子をひっぱりながら門を飛び出した。
バツが悪くてもう振り返ることもできない。部活の生徒の視線もいくつか感じた。
―――妙なうわさが立たなきゃいいんだが……。
いろんな事を考えながら稲葉は、門が見えなくなるまで李々子をひっぱって歩いた。
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