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「李々子さんに学校の門の前で抱きつかれて、慌てて出てきましたから」
「女子高の前で抱きついたのか、李々子は!」
宇佐美は少し大げさに驚いて李々子を見たが、目が笑っている。
今更李々子がどんな奇行に走っても、この、すべての物事に冷静沈着に向き合う男には楽しい余興でしかない。
「あら、キスしなかっただけマシでしょ。自粛してるのよ、これでも」
「基準がおかしいですよ、李々子さんの自粛は! なんでキスするんですか!」
悪びれない李々子に稲葉が不服そうに反撃する。
稲葉のピュアな反応に宇佐美がまた楽しそうに笑う。変わらない、いつものラビット事務所の風景だ。
仕事や対人関係でどんなに落ち込んでも疲れても、ここへ来るとなぜか安心感に包まれ、次への活力が湧いてくる。
稲葉は、ここが自分の居場所だと強く感じていた。
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