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「依頼の電話だったんですか?」
そう言いながら稲葉は自分のデスクに座り、小型のノートパソコンを開いた。
正社員ではないにもかかわらず、少し前に自分専用の高スペックPCを買って貰って、稲葉はご機嫌だった。
「うん。行方調査だよ。明日ここで詳しい話を聞いて見積もりを出す」
「へえ、人捜しか。ややこしくなければいいですね」
「そうだな」
「行方調査って、情報が少ないと時間と出張経費ばかりがかかってしまうから結局あまり収入につながらないのよね~」
李々子が渋った声を出す。
「まあ、そのために各方面にいろんな人脈が作ってあるんだけどね」
「人脈?」
稲葉の質問に、李々子が割って入る。
「そ。情報屋って言うのは大げさだけど、いろんな分野や地域に、協力を惜しまない諒の知り合いが居るのよ」
何故か李々子は得意げだ。宇佐美への信頼と、ちょっとばかりそれを超えた愛情が感じられて、稲葉はニンマリする。
宇佐美も李々子も互いに否定するが、けっこうこの2人はお似合いなのだ。
「へー、そうなんですね」
稲葉は笑顔で相づちを打ちながら、PCを操作する。
見慣れない派手な画面に気が付いたのか、背後から李々子がそっとデスクトップを覗き込んで来た。
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