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僕は気持ちを落ち着けて、文字を記していく。
ネット仲間のENMAが不機嫌なのは、5分ほど前にこのチャットルームに入室した時から、何となく分かっていた。
最初こそ楽しかったこの部屋も、この頃は少し義務感を覚える様になってしまった。
ENMA:『なあトム。近頃ここにいる時間、減ってないか?』
ト ム :『そうかな。時間を確認していないから分からないけど』
ENMA:『ぜったい短くなってる。来るのだって遅いし。もう飽きたのかよ』
ト ム :『そんなことないよ』
ENMA:『ボクがここに来たとき誰もいないと腹が立つ。ムシャクシャする!』
ト ム :『ごめんね』
ENMA:『退屈なんだ。一日中ボクは退屈なんだ。君が居ないと気が狂いそうだ』
ト ム :『ごめん』
ENMA:『君は謝ってばかりだな。つまんない。もっと楽しい話しようよ』
ト ム :『どんなの?』
ENMA:『ワクワクする話だよ。例えばさあ、ねえトム、放火ってしたことある?』
ト ム :『』
僕は一瞬書き込みを躊躇した。
唐突に、また彼は少し雲行きの怪しい方向に話を持っていこうとしている。
今までも何度かあった。
冗談とは分かってるが、犯罪をちらつかせる内容に話が行くと、僕は気持ちが沈んでいく。
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