1 >> 暗闇から

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僕は気持ちを落ち着けて、文字を記していく。 ネット仲間のENMA(エンマ)が不機嫌なのは、5分ほど前にこのチャットルームに入室した時から、何となく分かっていた。 最初こそ楽しかったこの部屋も、この頃は少し義務感を覚える様になってしまった。 ENMA:『なあトム。近頃ここにいる時間、減ってないか?』 ト ム :『そうかな。時間を確認していないから分からないけど』 ENMA:『ぜったい短くなってる。来るのだって遅いし。もう飽きたのかよ』 ト ム :『そんなことないよ』 ENMA:『ボクがここに来たとき誰もいないと腹が立つ。ムシャクシャする!』 ト ム :『ごめんね』 ENMA:『退屈なんだ。一日中ボクは退屈なんだ。君が居ないと気が狂いそうだ』 ト ム :『ごめん』 ENMA:『君は謝ってばかりだな。つまんない。もっと楽しい話しようよ』 ト ム :『どんなの?』 ENMA:『ワクワクする話だよ。例えばさあ、ねえトム、放火ってしたことある?』 ト ム :『』 僕は一瞬書き込みを躊躇した。 唐突に、また彼は少し雲行きの怪しい方向に話を持っていこうとしている。 今までも何度かあった。 冗談とは分かってるが、犯罪をちらつかせる内容に話が行くと、僕は気持ちが沈んでいく。
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