プロローグ

2/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
そんな日々が続き、この町から離れて引っ越す日が迫り、気が付けばもう引っ越す前日になっていた。憂鬱な顔で学校に行き、教室のドアを開けると、あまりの変わりように驚いた。いつも勉強に使っている机は中央に並べられ、綺麗な白い布が敷かれており、お菓子やジュースがいっぱい並べられている。壁や窓には折り紙で華やかに飾られ、黒板の少し上にはピンクの厚紙に『はるちゃんとのお別れ会』と書かれて張られていた。さらに黒板には何色ものチョークで『はるちゃんが遠くの学校に行っても四年二組の皆はずっとはるちゃんの友達だよ』と書かれていた。そして皆が温かい拍手で春流を、可愛く飾られたいつもと違う教室に迎え入れてくれた。 春流は思わず涙を流した。毎日流していた冷たい涙ではなく、温かい涙だった。これ程大事に思ってくれている友達の前で涙で濡れた顔は見せたくなかったので、俯いて涙を拭き笑顔で皆のもとへ駆け寄った。 クラス皆からのプレゼントとして、綺麗な小さい花束と、皆が書いてくれた寄せ書き、そして春流の為だけに作られた卒業証書と卒業アルバム。さらにはクラスの一人一人がプレゼントを用意されていて、それと一緒に別れの言葉を受け取った。 それが終わるとパーティが始まり、皆お菓子とジュースに夢中になり始めた。春流も最初は中に入っていたが、何となくそこから出て教室の隅の方に座った。そしてさっき貰ったアルバムを開いた。中には遠足や音楽会、運動会など皆との想い出の写真や皆が描いた絵、それに担任の先生、さらに今までの担任の先生のメッセージが添えられていた。 こんなに良い先生、大切な友達、毎日楽しく通った学校、この全てと別れないといけないと実感すると同時に、再び涙が溢れ出した。 「転校なんて……したくないよ」     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!