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邂逅
それから五年後。学力がお世辞にも賢いとは言えなかった春流は、中学三年生の夏に猛勉強して、小学四年生まで住んでいた神凪町にある、市立白鷺高等学校に受験し、見事合格する事が出来た。わざわざ白鷺高校を選んだのは、また友達と会いたかったから、泣き虫で弱虫だった自分の変わった姿を皆に見せたかったから、何より神凪町で高校生活を過ごしたかったからである。
四月八日。白鷺高校の入学式を明日に控え、春流は朝一番で神凪町に電車で向かった。これから三年間、神凪町で暮らす事になる。住む場所は以前住んでいた家。転校の際に泣きじゃくっていた春流に見兼ねた父が、家を売らずにそのままにしておいたのだ。そこで初めての一人暮らしとなる。
車窓から外を眺めていると、次第に懐かしい風景に変わっていく。神凪町に近付いていると思うと心が躍る。
『次は白波、白波――』
「久し振りだなあ。やっと戻って来れたんだ、神凪町」
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