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最後の授業が長引いたせいで、今日は少し家に着くのが遅くなってしまった。
慌てて電源をつけ、最初は暖まるまで時間がかかるので設定温度をマックスにする。
玄関のチャイムが鳴ったのは、それから約10分後のことだった。
「よっ、あったまってる?」
ドアを開けると、幼馴染の諒太はいつも通り、仕事帰りのサラリーマンの「ビール冷えてる?」風なテンションで聞いてきた。
初めの数回はツッコンでいたのだが、今ではもうすっかり飽きてしまって、「はいはい、あったまってるよ」と流すのみ。
しかしそんな私の塩対応も気にすることなく、諒太はまるで自宅かのように慣れた様子で我が家に上がり込むと、一直線に居間にある目的地へと急行する。
そして、無事いつもの場所へと辿り着くと、ため息まじりに呟いた。
「やっぱりいいよなあ、こたつ」
どうやら慌てて電源を付けた甲斐もあり、その旧型の機器は、ちゃんと暖まってくれていたらしい。
私もまた「もうおじさんくさいなあ」と文句を垂れながらも、いつもの場所へと戻る。
こたつを四角形で例えるなら、隣の『辺』だ。
毎年、私と諒太はこの位置で、春を待つ。
「そんなに好きなら、諒太もこたつ買って貰えばいいのに」
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