設定温度

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私は毎年のように言っている科白を口にしながら、置きっぱなしにしている漫画雑誌を開きかけていた諒太を見た。 その手が、一瞬止まる。 「それができたら俺だって、苦労しないよ。お前、うちの母ちゃんのインテリアコーディネーターとしての拘り、知らないだろ。テーブルの位置をずらされただけでどれくらい怒るか」 返ってきたのは、いつも通りの軽口。 私と諒太は、ご近所に住む幼馴染だ。 家族ぐるみの付き合いで、小さい頃は私もよく諒太の家に遊びに行っていた。 母親がインテリアコーディネーターをしている諒太の家はヨーロッパの風が吹き抜けるようなおしゃれ空間で、昔ながらのこたつは似合わない。 だからこたつに入りたい諒太は、毎年冬になると私の家に来るのだ。 小学校を卒業し、別々の中学に進んでからも、それは変わらなかった。 「知らんよ。どれくらい?」 私はこたつの真ん中に置かれていたみかんに手を伸ばすと、何気なく尋ねる。 「父ちゃんが、かつらずらされた時くらい」 私は手に取りかけていたみかんを戻すと、諒太に冷たい視線を向けた。 そして、今の冗談にもなっていないボケへの採点を下す。 「13点」 「厳しっ。てか、いきなり来るその無茶ブリやめてって前から言ってる」     
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