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「別にフッとらんし。『ずらされた』ってところ掛かっていた以外、意味わからんし。そもそも諒太のおじさんかつらじゃないし」
私はつらつらと低得点の理由を述べる。
その酷評に、さすがの諒太も少し顔が赤くなっていた。
「なんか俺、暑くなってきた。こたつの設定温度、下げて」
「こっちはあんたのせいで寒いわ」と返しながらも、確かに設定温度はつけた時マックスにしたままだったので、大幅に下げる。
弱よりの中、いつもの温度。
いつもの距離。
いつもの諒太。
小さい頃から、私たちはずっとこんな感じだった。
一番古くからの幼馴染で、周りから「仲いいね」って言われる友達で、ある時はクラスメートで、それから時々はちょっと家族みたいで。
でも私は心の奥で、それ以外のもっと別の関係を求めるようになっていた。
いつからかはよく分からない。
だけど一つ言えることは、私が冬を好きになったのは中学生になってから。
「やっぱりこのキャラ、安田に似てる」
諒太は一度閉じた漫画雑誌を開き、数ページ読んだ後、そう呟いた。
安田というのは、諒太が中学生になってから知り合った友達らしい。
「だから私、安田って人知らんし」
いつものように返しながらも、私の胸を寂しさが掠める。
別々の中学に通うようになって、幼稚園からずっと一緒だった私たちの間には距離ができた。
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