設定温度

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自分から言い出したくせにこの空気に耐えられなくなって、ついふざけようとするも、本気の注意をされてしまった。 私は素直に「ごめん」と謝り、諒太の質問に答えるべく、昨日の記憶を振り返る。 昨日の放課後のことだ。 私は自宅の近くで諒太のお母さんのばったり会った。 委員会があるから諒太が来ないことを知っていた私は、暫くおばさんと立ち話をした後、「寒いし、うちに寄ってかない?おいしいお菓子を頂いたの」と誘われ、喜んで諒太の家へとお邪魔した。 小学校を卒業してからは数えるほどしか行ったことが無くて、なんだか久しぶりだなと思いながら玄関を上がった。 相変わらずお洒落で綺麗なおうちで、統一された家具やインテリアに、衰えないおばさんの拘りを感じた。 しかし、通されたリビングへ足を踏み入れた時だった。 吹き抜けるヨーロッパの風の中に、明らかな異質を見つけた。 絨毯の上に、突然出現した『和』。 「見たよ。普通にこたつあったんだけど」 私はその情景を思い出しながら、答えた。 おばさんによると、先月お世話になった近所の人が引っ越す時、断り切れずに引き取ったらしい。 『少しも使わないのは悪いから、少しだけ置いてしまおうと思ってたんだけど、ダメね。こたつの魔力ってすごいわ』     
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