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おばさんはそう言って笑ったが、私は驚いてしまってあまりうまく笑えなかった。
だって、諒太は家にこたつが無いから、こたつに入るために私の家に来ているはずなのだ。
「家にあるなら、どうしてわざわざうちに来るの?」
ストレートに尋ねた私から、諒太は目を逸らす。
そして訪れた、居た堪れないような沈黙。
それを破ったのは、真っ赤な顔をした諒太のいつもの百倍ぶっきらぼうな一言だった。
「お前んちのこたつのほうが、あったかいんだよ」
窓には冷たい北風が吹きつける。
天気予報では、今週末には今季初の雪も降ると言っていた。
寒さはこれからもますます厳しさを増すだろう。
それでも私は、冬に「少しでも長くここに居てね」と言いたい。
私がもう少し素直になれるまでは。
「諒太んちの設定温度が低いんじゃない」
照れ隠しで言った私の言葉に、諒太は「そういう意味じゃねえよ」と返した。
そのあとのこたつは、いつもと同じ設定温度のはずなのに、なんだかちょっぴり暑く感じた。
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