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元日、噂の神社にて
お年玉で俺は、この恋の成就を買おうと思う。
元日。
俺は親戚の家を回り新年の挨拶を終えると、その際に有りがたく頂いたお年玉を携え、友人と待ち合わせしていた神社へ向かった。
いつも初詣に出かけている地元の神社よりも遠いこの場所を選んだのには、理由がある。
この神社は、恋愛成就のご利益があると言われているからだ。
しかも一回200円という俺的相場ではお高めなおみくじは、かなり当たるという噂なのだ。
隣のクラスの長岡も、去年このおみくじで大吉を出して、学年ナンバーワン人気の柴原さんへの告白を成功させたという。
だから俺も、大吉を引いて、去年の春から片想いしている西宮への恋を叶えてみせる!
そう意気込んで、参拝をするよりも早くおみくじの設置された一角へ向かうと、予め用意してきた100円玉を二つ料金箱に入れ、「大吉、大吉」と念じながら一枚の紙を選んだ。
そしておそるおそる開いてみる。
そこに現れた文字は……
『凶』
「うわ、最悪!」
思わず声に出してそう叫んでしまい、「あっ」と慌てて口を塞ぐ。
そして、「何だったの?」と覗き込んできた友人の直紀に手に持っていた紙切れを手渡す。
「『待ち人、来たらず』だって」
まだ俺が見ていなかった部分を口に出して読まれ、思わずギンと睨んでしまった。
直紀はその様子も含めて、可笑しそうに笑っている。
友達だと思っていたのに、ひどいやつだ。
「和馬って、昔から毎年のように凶引くよな」
直紀はそう言って、さらに笑う。
その通りなのだが、落ち込むからやめてほしい。
しかし、今年の俺は今までとは違う。
こんなこともあろうかと、おみくじ10回分、2000円を100円玉に両替してきたのだから。
「もう一回行ってくる」
俺はそう宣言すると、おみくじの列の一番後ろに再び並んだ。
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