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「いくらなんでも、もう諦めたら?」
20回目の結果を見て、直紀は、呆れとさすがに同情も含んだ口調で提案してくる。
あれから、俺は何度も列に並びおみくじを引いたが、両替してきた2000円分の100円玉が尽きても、大吉を当てることはできなかった。
それでも諦めきれなかった俺は、もう小銭も無かったし、そろそろ列に並ぶのも億劫になってきたため、ついに1000円札2枚で10回引くという荒技に出たわけだが、それでも……。
「なんで大吉出ないんだよ!このおみくじ、初めから入ってないんじゃないのか!?」
「去年、長岡が出したって言ってたんでしょ」
ため息まじりに直紀が言う。
「今年は入ってないのかも」
俺がそう返すと、直紀は今度ははっきりとため息を吐いた。
「なんのために神社が大吉隠すの?別にくじびきで当たったら景品あげないといけない屋台じゃないんだよ」
もっともすぎる指摘にぐうの音も出なかった俺は、ムカついて「じゃあ、お前が引けよ」と言った。
俺は20回中9回も凶だったのだ。直紀も凶を引いて落ち込んでいるところを、笑ってやろうと思った。
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