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しかし、仕方なく一枚だけ引いて戻ってきた直紀のくじには、俺が未だ目にしていない二文字があって……。
「ちゃんと大吉、入ってたね」
直紀はそう言うと、ひょいと俺にそのくじを差し出した。
「はい、あげるよ。俺、こういうの信じないし」
「バカ。人が当てた大吉なんてご利益あるかよ。それに、せっかく当てたんだ大事にしろ」
悔しさもあって俺がキレ気味でそう返すと、直紀は「こんなに引き直してる時点でご利益なんてないよ」と文句を言いながらもそのくじを引き戻す。
しかし、これで大吉が確実に入っていることは証明された。
20回引いても俺には一度も出ず、直紀は必発で引き当てたことから考えて、これはもう確率の問題ではない。
そう、これは気合と粘りの勝負!
俺は、「もう何が何でも大吉を引いてやる!」と財布の中から再びお年玉でもらった2000円を握りしめ、もう何度目かしれない列に並んだ。
そして、例のごとく後ろの人に「すみません」と言いながら10回分引くと、先ほど引き当てた大吉のくじをしっかり読み込んでいる直紀のところへ戻った。
「なんか良いこと書いてあった?」
「『願望 叶う』だって。本当に叶えてくれるなら、もうすっかり飽きたから、家に帰らせてくれって願うね。寒いし」
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