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「ごめんって、もうちょっと付き合って。ほらカイロあげるから。昨日のだけど」
俺はいつも通りの会話を交わしながらも、もう流れ作業のようにくじを開いていく。
『凶』
『末吉』
『凶』
『吉』
『凶』
『吉』
『小吉』
『凶』
『凶』
ここまでの9枚はまたしても、今までとほぼ変わらないラインナップ。
いや、中吉さえ出ていない中、畳み掛けるように来た『凶』『凶』という流れは今まで以上に悪いと言えるかもしれない。
「こんなに出ないんだから、逆に大吉出すよりもすごいってことで満足しない?」
本当に帰りたいのだろう、直紀がそんな強引な理論で納得させようとするが、俺は「しない」と速攻で却下する。
そして、小さく息を吐くと最後の一枚を開こうとした、その時だった。
「やっぱりこのおみくじ、当たるかも」
ふと、おみくじ・占い・オカルト全般を一切信じないはずの直紀が、直紀らしくない一言を呟いた。
「え?」と顔を上げると、直紀が俺の後ろを指差していたので、振り返る。
するとそこには、これから参拝に向かう様子の、振袖姿のクラスメートの姿があった。
「西宮……」
めっちゃかわいい。
今時、正月に振袖とかちゃんと着ちゃうところがまた良い。
「じゃあ、俺は帰るから」
ぼうっと見惚れていると、突然直紀がそう宣言した。
「は?なんで」
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