元日、噂の神社にて

4/9
前へ
/9ページ
次へ
「ごめんって、もうちょっと付き合って。ほらカイロあげるから。昨日のだけど」 俺はいつも通りの会話を交わしながらも、もう流れ作業のようにくじを開いていく。 『凶』 『末吉』 『凶』 『吉』 『凶』 『吉』 『小吉』 『凶』 『凶』 ここまでの9枚はまたしても、今までとほぼ変わらないラインナップ。 いや、中吉さえ出ていない中、畳み掛けるように来た『凶』『凶』という流れは今まで以上に悪いと言えるかもしれない。 「こんなに出ないんだから、逆に大吉出すよりもすごいってことで満足しない?」 本当に帰りたいのだろう、直紀がそんな強引な理論で納得させようとするが、俺は「しない」と速攻で却下する。 そして、小さく息を吐くと最後の一枚を開こうとした、その時だった。 「やっぱりこのおみくじ、当たるかも」 ふと、おみくじ・占い・オカルト全般を一切信じないはずの直紀が、直紀らしくない一言を呟いた。 「え?」と顔を上げると、直紀が俺の後ろを指差していたので、振り返る。 するとそこには、これから参拝に向かう様子の、振袖姿のクラスメートの姿があった。 「西宮……」 めっちゃかわいい。 今時、正月に振袖とかちゃんと着ちゃうところがまた良い。  「じゃあ、俺は帰るから」 ぼうっと見惚れていると、突然直紀がそう宣言した。 「は?なんで」     
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加