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「西宮居たら、もう俺はいいでしょ。声かけて来なよ」
「ムリムリムリ。向こう、家族と居るんだよ」
「ヘタレ!」
直紀はそう一喝すると、今日二度目のしっかりとしたため息を吐き、その勢いのまま大きく息を吸い込んで叫んだ。
「西宮さん!」
突如名前を叫ばれた西宮は、一瞬ビクッと肩を震わせたが、その後こちらに気づいて、一緒に居た母親と妹に一言二言何かを言うと、こちらに駆け寄ってきた。
「池原くん、高島くん!明けましておめでとう」
元日からこの笑顔が見れたのだ。もう大吉なんて引けなくても良いかな、という気もしてくる。
むしろ俺はこのラッキーのために、おみくじでは運を使わずに取っておいていたのではなかろうか。
俺と直紀も新年の挨拶を返すと、西宮はうずうずした様子で「ところで」と呟くと、俺の手元に視線を向けた。
そこには、石段の上に置かれたおみくじの山がある。
「何やってたの?」
「俺は大吉が出るまで帰れまてん的なやつに付き合わされてた」
直紀が余計なことを言う。
「何それ」
「知らない?ちょっと前にやってた、お店のメニューの人気ランキング当てるまで帰れないやつ」
「あ、知ってるかも!」
俺を差し置いて盛り上がり始める会話。
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