元日、噂の神社にて

6/9
前へ
/9ページ
次へ
ついつい面白くなさそうな顔をしていると、直紀が何の前触れもなくバンと俺の背中を叩いた。 「痛っ」 「じゃあ、俺は大吉出たから帰るよ」 思わず声を上げた俺を軽く睨むと、勝手なルールに基づいてそう宣言する。 俺は、今度は「えっ」と声を上げてしまった。 「あ、そうなんだ。池原くんも?」 直紀の言葉を受け、西宮が俺にそう尋ねる。 立ち去りかけて足を止めた直紀からは、「分かってるよな」という視線を感じる。 「俺は……」 そう口を開いた時だった。 俺の視線に、大吉が一枚の出なかったおみくじの山が映った。 一番良くても、中吉が一枚。 そこにも、大して良いことは書かれていなかった。 ここのおみくじは、当たると有名だ。 そう思ったところで、ふと、開きかけて止まっていたくじのことを思い出した。 最後の望みをかけ、こっそりと開いてみる。 『凶』 「……俺も、帰ろうかな」 そう答えた瞬間、直紀の視線が鋭くなったのを感じた。 一方、西宮は小さく「そっか」と呟くと、笑って言った。 「じゃあ、また新学期にね」 「うん。また」 そう答えて、手を振る。 振袖で駆けていく、その向かう先に母親と妹の姿はなかった。 待っていてもらわなかったのだろうか。 もしかしたら初めから、俺たちと回ろうとか……。 「もうお前、おみくじでどうにかなるレベルじゃねえよ」     
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加