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喋りながら、近づいていくフーリエに少女が手を上げる。先程と同じ事が繰り返される!と、
ミーシャが声をかける前に、静かに彼が、少女の手をとった。
「だが、こうして実写の、我々と同じ容姿をした子が、出てくるとなると、正直辛いな。
何がこの子を変えてしまったのか?どれだけ平和な世界だと思っても、悲しみや悲劇は
あるのだな。」
片方の手を、優しく少女の頭に重ね、感慨深げに傷だらけの顔を静かに歪ませるフーリエ。もしかして泣いているのか?…彼の傷、その傷がついたのは、どんな事情があったのだろう?何かを壊し、何かを失ったのかもしれない。勿論、ミーシャは知らない。何も知らないし、現状において何も起きてないのが、とても安心!だけど………
思わずといった感じで、ミーシャは言葉をかける。
「あのよ、フーリエ?…何も起こらないのは、本当にありがたいし、最高だと思うけど、
一応言っとくとね?これ、お話しの中の世界だからね。あんま、感情移入しちゃうとね。
あれだよっ!?ゆいにゃんみたいになって、友達を平気でホラー小説にぶち込む子に
なっちゃうからね!」
「わかっている。だが、例えフィクションだろうと、その物語が出来る土壌があったという事だろう。こんな幼い子が、世の中全てを憎み、天国にも行けず、さまよっているような
物語が生まれてしまうようなモノがな。」
喋りながら、少女の顔面を覆いつくした髪をそっと祓う。中から現れたのはつぶらな目と
白い人形のような肌。可愛らしい顔立ちだが、悲しみを讃えた表情にはやはり影がある。
「綺麗な顔だ…隠すなんて勿体ない。」
少女の目線まで、きちんとしゃがんだフーリエが優しく声をかける。もうそれ以上の言葉は必要なさそうだった。無言で彼に抱き着く少女。そのまま泣き出す彼女の髪を
撫でながら、フーリエも同じように涙を流しながら言葉をかけていく。
「もう、いいよ。いいんだ。もう終わったからね。君が悪いんじゃない。」
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