0人が本棚に入れています
本棚に追加
泣き崩れる少女の体が透けていく。これが日本でいう“成仏”という奴だろう。ヤバゲな
怨霊に近づいて、髪の毛掃って“美人宣言”するなんて、イカレタ祓い方もあったもんだが…まぁ、こーゆう展開を試みる度胸も大事か?俺達、同人部隊には…
少女の温もりを探すように、手を少し泳がせたフーリエが、こちらに向き直った。
表情はいつもの無表情。先程の涙はサプライズのようだな。そう考えるミーシャに、
静かに口を開くフーリエ。
「ミーシャ、ゆいさんに連絡して、ここから出してもらうぞ。」
「ロンモチだぜ!あぁっ~、あっの!可愛いゆいちゃんに地獄を見せてやろう
じゃないのさ?」
「違う、彼女に頼んで、もう一度、この話に介入するんだ。」
「へっ?何で?…」…
暗い薄明かりの中で、少女は目を覚ました。足元を素早く走り去った虫のようなものは、近くのゴミ溜まりに消えていった。少しづづ壊れていく自分の世界はちゃんと自覚している。狭いアパート暮らしから、一軒家に引っ越してきた彼女は、初めてこの家を見た時に妙な胸騒ぎを覚えた。
「新しい家に引っ越すから、緊張してるのよ。」
そう笑った母親の顔…最近は黒ずんで、良くわからない。何日もお風呂に入っていないからだ。臭いもヒドイ。家じゅうに充満している。あんなに明るく、優しかったのが、見る影もない。父親は仕事から帰ってくるたびにイラついて怒鳴り声を上げた。“お化け”みたいな顔をした母親を怒って、殴りつける。少女はそれが辛かった。休日には自分を車に乗せて、遊びに行ってくれる父親はもういない。家の中一杯に、ゴミが散乱し、父と母の争う声が
響き渡っていく。原因は家族ではない。絶対に、この家だ。そうわかっていても何も
出来ない。助けにきてくれる人もいない。少女は膝を抱え、今日も何かが変わるのを待っている。ふいに自室の廊下から、ふらつくような足音と重いモノを引き摺る音が
聞こえてきた。引き摺る音は金属音。あれは父親が大事にしていた野球部時代の
バットの音だ。何で、そんな物を持って、廊下を進んでくるのだろう?突き当りの部屋には自分しかいないのに。恐怖という感情が沸き起こってくる。嫌だ!来ないで!嫌だ!
イヤだ!!
最初のコメントを投稿しよう!