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辺りを探る。目に見えている光景は、何処かの一軒家の廊下と思われる。ゆいの家と
大差ない。日本のお話し。それも現代?可笑しい?てっきり、魔界や、宇宙空間、
地獄の最前線の世界観に放り込まれるかと思っていた。もっとも、ゆいの本棚には、
そんなもんはなかった。いや、待てよ?何処かでこのフレーズ、展開を見た気がするぞ?
あれは…
「ホラー文庫だ。」
泡を吹いて倒れている仲間の一人を引き摺りながら、廊下の突き当りから姿を現したのは元外人部隊出身の“フーリエ”だ。鋭い瞳と頬についた白兵戦の切り傷は凄いし、隣の大男と違って、震えてもいねぇ。今も泡吹いている同僚を何とかここまで引っ張ってきてるじゃん。だが、奴さんから出た言葉は不吉の一言に尽きる。もう一回言って?えっ?今何て?
ミーシャの疑問とは関係なくフーリエの言葉は続く。
「奥の台所で2人、体が捻じれて死んでいた。ここの登場人物だろう。コイツはそれ見て
失神した。どんな奴が来るかわからないが、何とか、ゆいさんに許してもらって、ここから出してもらった方がいい。」
「オイッ!そいつはやべぇぞ?ウチ等、その手のジャンルは初めてだぞ?てか、銃が効くのか?そんな相手に?」
焦るミーシャ、手持ちの携帯は、本の中からでも通じるが、問題はゆいが機嫌を直してくれているかという事だ。勿論、ここに送り込んだのは彼女だから、どんな事が起きるか承知の上での話だろう。更に言えば、ゆいが繋いだ世界は、例え物語の中であろうと、全て現実になる。ここで死ねば、生き返る事は出来ない。それがよりにもよって、ホラージャンルの
世界とは…
「クソッ、携帯にも出ねぇな。ゆいの奴、何となくホラーの世界なら、大丈夫と思ってるぞ?
絶対?」
「そりゃ、どうゆう意味だよ?」
ミーシャの悪態を理解できないといった感じで、首を捻ったベンガンが訪ねてくる。
最悪の瞬間は迫ってきているが、とにかく全員に状況を把握させなければならない。
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