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「大事にしなさいよ」
そう言われて渡されたポチ袋。
何に使おう。洋服? ノート? 漫画?
いろいろ考えていたのに、私のお年玉は君になった。
一目見たその瞬間から、目が離せなくなったのだ。
「ぴーぴー」
水槽の中で他の雛に踏まれて、鳴いていた君から。
その文鳥の雛はとても安くて、お年玉で餌や籠を買ってもおつりがくるぐらいだった。
「あんたはなんでまた、生き物なんて! 餌代があんたのお小遣いじゃ賄えないでしょ!」
お母さんが何か言っていたけど、お父さんが文鳥にメロメロになったので私の勝ちだ。
「名前は?」
「んー、文鳥だからブンちゃん!」
安直極まりない名前でごめんね。
まだ挿餌が必要だった君を手のひらに乗せ、口の中に餌を送り込む。小さなあたたかな生き物が、とても愛おしく思えた。
幸いにして君は、冬休みが終わって学校が始まるころには一人餌が食べられるようになった。
でも家に残した君が心配で心配で心配で。
学校が終わると家に走った。ランドセルを放り出し、覗き込む。
私の顔を見て鳴く君が、とても可愛かった。
「ブンちゃん」
「ぴ!」
ずっとずっと見ていられた。
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