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こたつの上に置いていたスマホが鳴った。
開くとシュンイチと表示した親友からの着信がかかっている。
本当は出たくないが、しかたなく寝そべったままの状態ででた。
「はい、もしもし」
「おうハジメ。ラーメン食いに行こうぜ」
「今日はいいや」
「ははーん、そんな金欠な貴方を、ラーメン一杯おごりましょう」
断られた理由の的は外れてるが、親友はそれを想定していたかのように、次の矢を打ってきた。
うーん、正直悩む案件に、返事を留めていたが、支度してチャリに乗って待ち合わせ場所に行くという脳内シミュレーションをすると、めんどくさくなった。
「年明けにラーメンおごれよ」
「わかった。年明けに予定入れんなよ」
それでも食い下がるかと思っていたが、親友はあっけなく電話を切った。
自分で断っておきながら、なんだか寂しさがあった。
「夕方までのんびりするか」
もうすぐ母親が帰ってくるから、その時に大掃除をした息子を労って何か作ってくれるだろう。大いに期待しよう。
またこたつの上のスマホが鳴った。
開いて、着信表示された相手の名前をみた途端に、がばっと上体を起こして電話にでた。
「もしもし、どうしたの?」
「あのね、急にハジメに会いたくなったの。一緒にご飯食べに行かない?」
「うん、いいよ。どこで食べようか?」
暫く動かないはずだった体が自然と立ちあがり、行く支度を整えた。
初めてできた恋人からの連絡に、体も心も喜んでいるのが分かる。
街で親友と鉢合わないように気を付けねばならないと、浮かれている気持ちを整えて、玄関を開けて外に出た。
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