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 春日井は、ビールでもつ煮込みを流し込んだ。酒はあまり強い方ではないが、飲むのは嫌いじゃない。すでにほろ酔いで気分は良い。大学生の頃にも人並みに飲む機会はあった。サークルやゼミの仲間と、男女で飲みに行ったこともある。しかし、どうにも馴染めなかったのだ。大抵は端っこの方で苦笑いしているだけで終わった。楽しいと感じたことは一度もない。  ――いかん! また過去の自分を思い出して、泣きそうになってしまったではないか! そんな自分を変えたくて、1部上場企業に入ったのに! 「……で、その柳係長って、何歳?」 「えっ? ……30代前半、いや、半ばぐらいかな」 「独身?」 「うーん……聞いたこと無いけど……独身じゃないかな」 「ええやん!」 「何がよ!」  脇坂は2杯目のビールをいつの間にか注文していた。学生時代はこんな風に話せる友達は1人も居なかったのに、就職活動で知り合った脇坂とは長年の親友のように話せるのが不思議だ。女2人だと自然と男の話になってしまう。春日井は特に意識していなかったが、考えてみれば、若い女性の部下と男性上司が2人きり。色っぽいシチュエーションを想像するのも無理はないのかも知 れない。
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