序章 イケメン。現代のホテルからどっかに飛ばされる。

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 テレビの中から聞こえる除夜の鐘が打ち終わり、ようやく新年が明けた。 全国各地を中継するアナウンサーが、知りたくもないのに年が明けた様子をしきりと報告して来て、それをオレはウザく感じてしまっている。 そんな年明けをココのところ毎年のことだが、いつも利用している渋谷のホテルで過ごしている。 ただ違う点があるとすれば、いつも年末を一緒に過ごしている女が、毎年違う点だろうか。 「ねえ、初詣一緒に行こうよ」  さっきまでオレの相手をしていた得意先の受付嬢が、一切のムダ毛のない美しい裸体をベッドの上でくねらせて、やや上気した幼げな顔を笑顔で綻ばせながら尋ねて来た。 「いや、今日はもう寝るよ。もちろん君とココでだけど」 「ウフフ♪嬉しい。お風呂一緒にどう?」 「ありがとう。そうするよ」  じゃあ。と云って、浴槽に湯を貯めるため喜々として浴室に向かう彼女の後姿を見送り、オレはソファーに腰かけくつろぐ振りをしながらlineのメッセージの確認をする。 「公佳(きみか)は朝十時に人形町で待ち合わせ。陽(ひな)詩(た)は午後四時に秋葉原か。相変わらずこの子はオタだな。どんなプレイも応えてくれるからオレ的には構わないんだが」  公佳は大学時代の後輩で、今は官公庁に勤めている女で背がすらっと高く、近くに十人の男が居たら、まず間違いなく全員が振り返るだろう切れ長の目の整った、スーツがよく似合う黒髪の美人だ。  陽詩は去年の春からオレの母校である大学に進学したアニメのコスプレ好きで背の低い笑顔が可愛らしい少女だ。 たまたまオレが幾つか所属していたサークルの飲み会に呼ばれ、それに参加したことが切っ掛けで知り合い打ち解け合い、その後、いつもの流れで所謂仲良くなり今に至っている。
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