幸せのかたまり

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まだ半分しか覚醒していない耳に、かすかな、ギョリ・・ギョリ、という音が聞こえた。小さな貝殻を擦り合わせるような静かな音だ。 麻結美(あゆみ)は、膝の上に落ちていた文庫本を取り上げてテーブルの上に置き、軽く背伸びをしてから立ち上がった。 傾き始めた日差しのオレンジ色をした薄闇が入り込んだ部屋は、一瞬、景色が違って見え、自分の部屋ではない、どこか全然知らない場所に見える。 静かすぎるせいかもしれない。
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