幸せのかたまり

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彼が居なくなり一人になった麻結美の話し相手はインコのこゆき。 三年前、生まれたばかりのまだ毛も生えていないピンク色の小さなヒナから育てた。だから手乗りどころか手の中で寝てしまうほど麻結美に慣れて心を許している。 でもそれは麻結美に対してだけ。ボタンインコはとても賢く、人を識別するので、彼に対してはいつまで経っても懐かなかった。迂闊に手を出すと噛まれた。 「俺に焼きもち焼いているのかな」 「さあ。こゆきに聞いてみようか」 「聞くって、インコに言葉なんて分からないだろう」 「そんなことないよ。ねえ、こゆき」 彼と交わした他愛のない会話。思い出と呼ぶにはあまりにも儚い朧げな記憶。
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