ー7ー 彼女の部屋

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 とうきび茶の香ばしい香りの中、僕は本棚に目を向けた。たくさんの本が収まっていた。  図鑑、教科書、専門書に小説、漫画、絵本まで様々な種類の本があった。 「図書館みたいだろ?」と信吾が樹木図鑑を読みだした。 「ほら、これ。イチイって木があるだろ?俺ずっとオンコの木って呼んでて、イチイって名前があるなんて知らなかったんだよ」 「オンコって赤い実がなる木だよな。へぇー、イチイっていうんだ」 「咲ちゃん、イチイだったよな。シカが食べちゃうのって」 「うん。イチイはエゾシカの好物だから、皮を全部食べちゃうの」 「そうなんだ。初めて知ったよ」僕は驚いた。 「ここに来ると勉強になるでしょ?」 「うん。知らない本がたくさんあるし、それに咲さんも僕の知らないことを知ってて楽しいよ」  すると信吾と里恵さんが嬉しそうに顔を見合わせて笑った。  そうか、咲は普段僕たちがあまり見ようとしないものに目を向けている。たくさんのことを知っている。僕の知らない素晴らしいもので溢れているんだ。咲は、僕と違う方向からの視点を教えてくれる。  僕は元素図鑑を手に取った。中学・高校で習ったものをこうして見ると面白いと感じた。  気が付くと、皆それぞれ本を手にしていた。  咲は僕の隣で雲の写真集を見ていた。積乱雲のページだった。 「ねぇ、それって」 「うん、入道雲だよ」  そのウキウキしたような表情を見て僕は、こうして好きなことをしている時の顔をもっと見たいと思った。 そしてそんな時に、自分が隣に居られたらいいと思った。
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