ー9ー 出張

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 僕が出張する時、荷造りは妻がしてくれる。  アイロンのかかったYシャツにハンカチ、靴もピカピカに磨いてくれている。  本当にありがたい。  ただ、毎回カバンを開けてびっくりする。  全くもって出張に関係のないものが入っているからだ。  鼻ひげメガネ、拡大鏡、おもちゃのパイプ。  そして丸々と太ったアニマルマスコットがゴロゴロ出てくる。  マスコットを机に並べ、鼻ひげメガネをかけ、パイプをくわえ、拡大鏡を持つ。 「探偵だ!」  急いで妻に電話をかける。 「わかったよ咲!探偵だね!」 「当たり!」コホンと咳払いをして妻はかしこまって続けた。 「では、幸介くん。マスコットたちの事件を解決してくれたまえ」 「事件!?」 「いかにも。期待しておるぞ。ほっほっほ」  電話が切れ、僕は笑う。  よーし!と腕まくりをして、妻からのサプライズを楽しむ。  また妻に電話をかけて、答えと今日の出来事と感謝を伝える。  離れていても僕を支えて、笑顔にしてくれる妻は大切な存在だ。
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