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僕と妻が付き合う前、僕の友達カップル(信吾と里恵さん)と咲と僕でキャンプをしたことがある。
テントを立てた後、テントの中に虫が出て大騒ぎをしている里恵さん。
そこでもちろん信吾が登場するかと思いきや、さっそうと咲が現れた。
「どうしたの?里恵ちゃん」
「咲ー。虫ー」
「あぁ、虫ってバッタだよ」
そう言って咲は素手でバッタを捕まえた。少し離れた所で優しく地面に放していた。
「咲さん。虫、平気なの?」
「うん。みんな好き。同じ命だから」
その時の咲の透明な瞳に僕は息を飲んだ。
「咲ちゃんありがとうー。俺、虫ダメでさ」と陰に隠れていた信吾が出てきた。
「もう!あんたって人は!すぐに助けに来てよー」と里恵さんが頬を膨らませてやって来た。
「ごめん里恵。バッタは本当に無理なんだよ」
「次は助けてよね!」
「もちろん!俺だって勇気出すからな」
「頼りなーい」
そうやって楽しそうに会話をする二人を咲は嬉しそうに見ていた。
早めの夕食を終えて、僕は咲に誘われて洗い場に皿などを洗いに来ていた。
皿を洗いながら咲が口を開いた。
「里恵ちゃんと信吾さんを二人きりにしてあげたくて。付き合わせてしまってすみません」
「いいんだよ。僕も手伝えて嬉しいから」
「私、里恵ちゃんが幸せになって欲しいと心から思っています。バッタ事件の時みたいに笑っていて欲しいって思います。里恵ちゃんの幸せそうな顔を見ると、あぁ良かったって思えるの」
「咲さんは友達想いなんだね」
「大切な友達だから」
そう笑った咲の顔がとても優しくて、僕の心までも優しくしてくれた。
友達の幸せを妬む人はいるのに、心から応援して幸せを願う人がいる。この人はなんて素敵な人なんだろう、と僕は思った。
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