ー12ー キャンプ

3/3
前へ
/40ページ
次へ
 すっかり日も落ちて、信吾と僕は男チームのテントで寝る準備をしていた。 「それで、咲ちゃんはどう?仲良く皿洗いに行ってたけど。うまくいってんの?」  寝転がっている信吾が唐突に聞いてきた。 「うまくいくって。まだ友達として始めたばかりだからな」 「ふーん。で、お前の気持ちはどうなの?」 「どうって?」 「お前は、咲ちゃんと今後、どういう風に付き合っていきたいんだよ?」 「とりあえず、咲さんのことを知りたいとは思う。友達想いで、命を大切にしてるし、素敵な人だと思う」 「そうなんだ。じゃあさ、咲ちゃんと恋人として付き合って、咲ちゃんが隣にいる人生ってのもありだと思う?」 「隣に」  僕は想像した。僕の隣に咲がいて、優しく笑っている。それを見て僕も笑う。胸のあたりが温かくなった。 「ありだな」信吾の言葉で僕はハッとした。 「え?」 「うん。ありだ」信吾はにやにやと笑って僕を見ていた。 「言っとくけど、相手にだって選ぶ権利があるんだからな。僕は外に出てるから、先に寝てろ」  顔が赤くなるのを見られないように、慌ててテントの外に出た。  焚き火の近くの椅子に咲が座っていた。僕は深呼吸を一つして近づいた。 「あの、隣、いいかな?」 「はい」  僕は少しドキドキしながら咲の隣に座った。  星空に虫の声。夏の夜の中、僕と咲は他愛のない話をした。  一つ一つ咲を知って、一つ一つ咲を好きになっていった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加