ー13ー 不安を溶かすのは君の手

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 仕事を終え、家に着き玄関のドアを開けた。  いつもなら明るいはずの居間が暗かった。  もしかしてと僕は慌てた。妻が倒れたのか、具合が悪くて寝ているのかもしれない。僕が出かける時は元気に笑っていたのに。  急いで居間に入り電気をつける。今朝と何も変わりない。  妻の部屋のドアが少し開いていた。 「咲」  僕は妻の名前を呼びながら部屋に入った。  妻が床で横になっていた。 「咲!咲!大丈夫?」肩をゆすって声をかけた。 「こうちゃん・・・?」妻がむくっと起き上がり、眠たそうに僕の名前を呼んだ。 「あれ?もうこんなに暗くなってたの?幸ちゃんからもらった本読んでたら、いつの間にか寝ちゃってた」  そう言う妻の周りには、よく見ると僕がプレゼントした本がたくさんあった。 「具合は何ともないの?」 「うん。何ともないよ」 「よかった」 「夢の中でね、二人で土器を採掘してて、幸ちゃんこーんな大きな壺を見つけるの」  にこにこと笑いながら話す妻を僕は抱き締めた。  すると妻は不安を溶かすように僕の背中を優しく撫でた。 「ごめんね幸ちゃん。ありがとう。おかえりなさい」
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